今月みたもの(2018年10月)

ポール・グリーングラスユナイテッド93』(United 93)2006年

ユナイテッド93 [DVD]

 2001年のアメリ同時多発テロにてハイジャックされた4機のうち、唯一ターゲットに到達しなかったユナイテッド航空93便の様子を描いた映画。綿密な調査に基づいたリアリティ、無名俳優や当事者本人を出演させたことで生まれた記録としての質感。終盤にかけての緊張感と、ドラマ性のない結末まで、本当に徹底されたドキュメンタリー性を感じる。テロリストが見せる焦り、飛行機の乗客が発揮した残虐性を目の当たりにすると、美談として終わらせない姿勢を強く感じる。『ダンケルク』みたいな体験映画。

 

ロバート・レッドフォード『リバー・ランズ・スルー・イット』(A River Runs Through It)1992年

リバー・ランズ・スルー・イット [DVD]

 モンタナ州を流れるブラックフット川を中心としたある家族の肖像。淡々としるけどとてもいい映画だった。家族の絆の象徴としてフライフィッシングが登場するのだが、川と対峙するこの瞬間は、何にもまして美しく豊かである。

 タイトルの「イット」とは何か考えながら観ていたが、一言で表すのは難しい。川は、そこに転がる石ができた5億年前からの歴史も、家族の感情も、言葉も、何もかもをたたえてそこに流れ続けるのだろう。

今月きいたもの(2018年9月)

Troye Sivan『Bloom』(2018年)

Bloom

 南アフリカ出身、オーストラリア育ちというシンガーのセカンド。ただただ高揚するだけではなく、深く広がるようなイメージも持たせるポップアルバム。The Killers好きの私にちょうどいい。「The Good Side」や「Postcard」などの染み入る曲もとてもいい。

 

Wild Nothing『Indigo』(2018年)

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 ロサンゼルス発のプロジェクトの4枚目。80年代感が色濃いドリームポップ。耽美な雰囲気が溢れます。

 

Blood Orange『Negro Swan』(2018年)

Negro Swan

 美しくメロウだけど、緊張感をはらんだソウル。秋の夜長のお供に。

 

Big Red Machine『Big Red Machine』(2018年)

Big Red Machine

 Bon IverとThe Nationalの融合。それで想像する通り、壮大で、地に足のついた浮遊感(?)が味わえる。

今月みたもの(2018年9月)

ディーン・パリソット『ギャラクシー・クエスト』(Galaxy Quest)1999年

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 めちゃくちゃ面白かった。パロディかつメタ的な視点の映画のわりに、すっきりとした話はこび。宇宙船の核心部に続く道が無意味にダンジョンじみているところなど、ニヤニヤする場面の目白押し。観ている間は、言葉を繰り返すことに使命を燃やす金髪美女がシガニー・ウィーバーとは、まるで気づかなかった。

 

ルパート・サンダース『ゴースト・イン・ザ・シェル』(Ghost In The Shell)2017年

ゴースト・イン・ザ・シェル[AmazonDVDコレクション]

 作品ごとにいろんな過去を持つ草薙素子が発生していて、本当に同位体をばらまいているようですね。押井守の映画の実写化、というような場面も多くて、私にとっては割と淡々とした映画だったという印象。バトーが裸眼で出てきてびっくりしたが、途中から無事ペットボトルキャップみたいな目になったので一安心。

 

F・ゲイリー・グレイ『ストレイト・アウタ・コンプトン』(Straight Outta Compton)2015年

ストレイト・アウタ・コンプトン [DVD]

 ヒップホップが何を語ろうとしているのか、その一端がよくわかる映画。そして、シュグ・ナイトはとてつもなくやばい人じゃないか、というのがよくわかる映画。すごくよかったです。

 

デヴィッド・エアースーサイド・スクワッド』(Suicide Squad)2016年

スーサイド・スクワッド(字幕版)

 国の方が悪人っぽい、という感じ。最後の戦いは何がなんやらであまり乗り切れず。この映画でのジョーカーも好きです。

今月きいたもの(2018年8月)

蓮沼執太フィル『アントロポセン』(2018年)

ANTHROPOCENE(アントロポセン)

 アントロポセン(人新世)は新しい地質年代の名前で、人類の活動がついに地質学的にも地球に影響を…とアルバムには強いテーマがあるようだが、それを差し置いて曲が豊かで嬉しさがこみ上げる感じだ。総勢16名のフィルで、ポピュラーじゃないけどポップな音楽が紡がれ、何度も何度も聴かれるに耐える内容。柔らかい音像で、すっと生活に入り込むような感じで好き。というかスティールパンが鳴っていればそれだけで好きなのかもしれない。不満があるとすれば「Meeting Place」のPVの棒人間だけで、これからもずっと聴き飽きない予感がある。



Wet 『Still Run』(2018年)

Still Run

 NYのデュオのセカンド。ゆったりと雄大サウンド、そこに優しく伸びやかなメロディーが乗るのでもう大好きです。冒頭のタイトル曲で次第に声が重ねられコーラスと化していく高揚感がハイライト。

 

 DJありがとう『宇宙 日本 あなたが好きです』(2018年)

 夏のテンションをぶち上げたい!みたいな気持ちはすっかりなくなっているこの頃なので、こういったミックスが気に入りがち。かせきさいだぁ「苦悩の人」、choochoogatagoto「A.H.」、TAMTAM「Esp」で「きたきた」と思う、そんな夏でした。