今月きいたもの(2018年6月)

Tom Misch『Geography』(2018年)

Geography [帯解説・歌詞対訳/ボーナストラック2曲収録/国内盤] (BRC564)

 ロンドン出身のデビューアルバム。ジャンルがなんだか捉えきれないけど、適度にスムーズでダンサンブルでノスタルジックでビタースイートな感じ。何を言ってるか自分でもわからないが、良い。ジョン・メイヤー感のある”Movie”、浮き立つようなギターが体を揺らす”Disco Yes”、イントロで即殺された”South of the River”など、聞きどころは満載。夜ゆっくりと酒を飲むときとか、ずっと聴いていたい。

 

Family of the Year『Goodbye Sunshine, Hello Nighttime』(2018年)

Goodbye Sunshine, Hello Nightt

 カリフォルニアのバンドの4枚目。ゆったりと柔らかい。冒頭2曲の流れがとても良い。ありふれていると言われればそうかもしれないけど、歌心あるメロディアスなものは好きなのです。



Arctic Monkeys『Tranquility Base Hotel & Casino』(2018年)

Tranquility Base Hotel & Casin

 イギリスのバンドの6枚目。鍵盤の音が多く、わかりやすいバンドサウンドではなくなった。転がるような早急なグルーブを繰り出していた1stとは全く別のグループのようで、賛否両論がみられる。僕はこのバンドの人たちと近い年代だが、変化していく新作を聴くたびに驚きつつ、でもしっくりと馴染んでいくのを感じる。もし”I Bet〜”みたいな曲が詰まったアルバムが今出たとして、好んで聴くかというと疑問だ。なんだか一緒に年を取ってくれるバンドのようで、その点ですごく信頼できる。

 

V.A.『DIE IN POP』(2018年)

 Ano(t)raksからの日本のインディーポップ・コンピレーション。Garireo Garireiみたいな青春を歌うfish in water projectの”セツナブルー”、爽やかが爆発するThe treesの”Girlfriend”、もちろん疾走感もあるPOISEの”疾走”など、初夏の海辺を思わせる曲が多く、これからの季節にぴったりで良い。奇妙さがクセになるさとうもかの”Weekend”が個人的ハイライト。

 

今月みたもの(2018年6月)

ポール・グリーングラスボーン・アルティメイタム』(The Bourne Ultimatum)2007年

ボーン・アルティメイタム (字幕版)

 DVDのジャケットだけど、こんなシーンあったけ…?3作続けて観たが、群衆に紛れて追っ手を巻くとか、カーチェイスといったお家芸は健在。しかしモロッコの密集した住宅地の屋根を走っては跳び、窓を破りまくる追跡兼逃走シーンはハラハラするし、CIAを出し抜き本部に潜り込むところはとてもかっこいい。1作目のオマージュも出てくるのも良い。大変素晴らしいシリーズでした。

 本作の個人的見所は全て以下の動画で確認できる。

 

トニー・ギルロイボーン・レガシー』(The Bourne Legacy)2012年

ボーン・レガシー [DVD]

  マット・デイモンの代わりに、ジェレミー・レナーがCIAとか警察とか殺し屋とかオオカミとか無人戦闘機に追われたり、逆に追いかけたりする映画だった。テンポが冗長な感じで、あんまりハマらなかった。

 

 ポール・グリーングラスジェイソン・ボーン』(Jason Bourne)2016年

ジェイソン・ボーン [DVD]

 マット・デイモンが戻ってきた。人を替え場所を替え、やってることはいつもと一緒なんだけどちゃんと面白い。ボーン大好きCIA側はついに長官がのこのこ現場に登場。層が薄くない?ラスベガスでのカーチェイスが大興奮で、SWETの車ちょーつえーとなります。

 

デミアン・チャゼル『セッション』(Whiplash)2014年

セッション [DVD]

 日大アメフト部の騒動のあとだとなおさらですが、こんな指導褒められたものじゃない。でも指導者と奏者、どちらもドン引きするようなエゴをさらけ出しきっているのが奇妙な清々しさにもなっている気がする。緊張感あふれ、映画としてとんでもなく面白いのは間違い無いです。ドラムかっけーとなります。

 

 『シャーロック(シーズン1・2)』(SHERLOCK)2010・2012年

『SHERLOCK/シャーロック』 DVD プチ・ボックス シーズン1 『SHERLOCK/シャーロック』 DVD プチ・ボックス シーズン2

  大変話題のドラマがずんずん再放送されているので観ていた。第1話は事件としてなんだか地味だし、シャーロックの破綻者ぶりにちょっと乗り切れなかったが、徐々にワトソンとの掛け合いが噛み合ってくると観るのが止まらなくなった。キャラクターで引っ張られる魅力がある。モリアーティが出てくる話は大概お気に入りです。

ささやかな観察と記録『ナショナル・ストーリー・プロジェクト』

ナショナル・ストーリー・プロジェクト

『ナショナル・ストーリー・プロジェクト』

出版社:新潮社

編者:ポール・オースター

訳者:柴田元幸

原著:I Thought My Father Was God And Other True Tales From NPR's National Story Project (2001)

 

 『家、ついて行ってイイですか?』というテレビ番組がやっていると、ついつい引き込まれて観てしまう。その辺でちょっと酔っ払ってるおっさんの汚い部屋で、思わぬドラマチックな人生に少し触れる、そんな瞬間に、その人の身の上を思い涙し、そして自分の人生のなんともない薄っぺらさに若干の惨めさを感じたりする。人には誰しも語るに値するような経験は一つはあるという。僕はそんな物語を持っているだろうか。

 『ナショナル・ストーリー・プロジェクト』はアメリカのラジオ番組から生まれた本だ。必ず事実で、また短い物語を、リスナーから募集し、集まった4000の物語から180を厳選してまとめたのである。いずれも技巧的なものではないし、支離滅裂な、あるいはオチもないような話ばかりだ。しかしそこには、アメリカの「庶民」ひとりひとりの息遣いが溢れているような、親密な雰囲気が漂う。どの物語も、一人の人間の人生の一コマなのである。

 全体を通して、”運命の偶然”を扱う話が多いのだが、ささやかな親切や喜び、あるいは後悔の念を伴うような物語が僕のお気に入りだ。

 「思い出す営み」はクリスマスの話。父親を亡くして迎えたクリスマス、今年はツリーを飾ることすら望めない。そんな夜にまったくの偶然で拾ったツリーを引きずりながら持ち帰ることのできた娘。そんなツリーに、それまでは毎年父親がささやかな儀式のように飾り付けていた人形を、同じように母親が吊り下げ涙する。習慣の中に大切な人の存在が宿っていることを思い知らされるような話だ。

 生活の様子が精刻に描写されるほど、とんでもない実感が伴って人の人生が目の前に現れることがわかる。兄の戦士によって、なんでもない昼下がりの時間が静止したかのようになる「ある秋の午後」のリアリティは圧巻だった。なんでもないような1日も、丹念に描くことで、とてつもなく大切な日なのだと突然印象が変わるような「日曜日のドライブ」も心に残った。

 僕には人をあっと言わせるようなエピソードはないかもしれない。でも、心の自由をまっすぐに描く「海辺」のように、自分の周辺をよく観察し、またそれを丁寧に記録しようとすれば、小さな豊かさが少しづつ溢れてくるかもしれない。そんなことを思わされる一冊だった。

 

今月きいたもの(2018年5月)

EVISBEATS『ムスヒ』(2018)

ムスヒ

  奈良県出身のトラックメイカー。6年ぶりという新作。めちゃんこ聴いた。いや、まだ聴いている。時間にも心にも余裕があるような気持ちを生む、統一感あるやわらかいトラックで占められている。ただの散歩も贅沢な時間にしてくれる。”オトニカエル”がハイライト。

 

EVISBEATS『ひとつになるとき』(2012)

ひとつになるとき

 ついでに改めて聴いている。”いい時間”、”ゆれる”はもちろん最高。エスニックな匂いが強い曲が多いが、沖縄感溢れる”気楽な話 remix"なんかもすごい良い曲だな。

 

Ryley Walker『Deafman Glance』(2018年)

Deafman Glance

 シカゴのSSW。太めのフォーク。というよりプログレ。一部ジャズで、インディロックでもある。朝にスピーカーからそれなりの音量で流すととても良い。7曲目にして壮大な開放感をもたらす”Expired”が好き。

 

cero『POLY LIFE MULTI SOUL』(2018年)

POLY LIFE MULTI SOUL (通常盤)

 4枚目のアルバム。さらりと良いとか好きとか言えないけど、タイトでソリッドでかっこいいのは間違いない。これから何度も繰り返し聴いて把握していくのは楽しみだし、アーバンクルージヴな(適当)”Double Exposure”は夏にかけて聴いていきたい。これはヘッドホンで聴くのがいい。

 

cero『街の報せ』(2016年)

街の報せ

 未入手だったので買ってきた3曲入りシングル。”ロープウェー”は名曲。ノスタルジーを感じるトラックに乗る「やがて人生は次のコーナーにさしかかって」という詞たるや。