今月きいたもの(2019年4月)

Stella Donnelly『Beware Of The Dogs』(2019年)

Beware Of The Dogs

 オーストラリアのSSW。パンクも逃げ出すような強い言葉が歌われているようだが、曲調は超絶ポップでどこか牧歌的。したがって晴れた昼間に聴くのが良い。でも歌詞は衝撃的なもの。それでも曲調は爽やか…と逡巡のループみたいなのにはまったが、良いメロディはそれだけで良いものなのだ。

 

Nilufer Yanya『Miss Universe』(2019年)

Miss Universe

 ロンドンのSSW。ソウルシンガーみたいなことも書かれてたけど、グランジみたいなのもあったり、曲ごとに雰囲気がガラリと変わるごった煮アルバム。キャッチーだったりメロウだったり、どの曲も良い。

 

くるり『ソングライン』(2018年)

ソングライン <通常盤:CD>

 初めて聴くけど聴いたことがある気がする。どう聴いてもくるり。安心のブランド。

 

Frank Ocean『Blonde』(2016年)

Blonde [Explicit]

 アルバムというより、「Self Control」を聴いている。2分半くらいからの転調部分が夜明け・夕暮れを想起させるというのを聞いて以来、ふとした時についつい聴いては、胸を締め上げる切なさみたいなのを味わっている。荘厳なのに切ないというのはなんだかすごい。ランニング用の曲にもしている。走るリズムと合っているのかはわからないが。

今月みたもの(2019年4月)

スティーヴン・スピルバーグブリッジ・オブ・スパイ』(Bridge of Spies)2015年

ブリッジ・オブ・スパイ (字幕版)

 冷戦下、米ソが互いに捉えた諜報員同士の交換に奔走する弁護士ドノヴァンの物語。たとえ敵国のスパイであろうと、法の下では平等な人間として扱わなければならないと主張し、世間からのバッシングにもめげずに戦うドノヴァンの姿にぐっときそうになる一方で、お前の国も国境侵犯して偵察機飛ばしとるやんけ、という気持ちも頭をもたげる。ともかく分断をもたらす戦争はしてはいかんという映画。

 ソ連のスパイを演じたマーク・ライアンスは、知的で得体の知れない雰囲気をまといすごく印象に残る。なにしろアカデミー賞助演男優賞賞を獲っていた。序盤で逮捕されるシーン、身分をいつわろうと下着姿の冴えないおっさんに化ける場面が見どころ。

 

ジョー・ジョンストンキャプテン・アメリカ ザ・ファースト・アベンジャー』(Captain America: The First Avenger)2011年

キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー (字幕版)

 なんのかんのほとんど観ていないMCUを観まくるマラソンを始めた。エンドゲームとやらを楽しんでみたい…という気持ちがあるのだが、果たして間に合うのか。

 ということでここからスタート。キャプテン・アメリカとはダサい名前だと思っていたら、ダサいコスチュームを着てダサいダンスを踊る奴だった。この人はすごい特殊能力があるわけじゃなくて、ちょっと人体能力がずば抜けてるだけで、あとは勇気だけだ!という島村ジョータイプに思われるのが好感の持てる部分。インディ・ジョーンズ感のあるお話でした。

 

ジョン・ファヴロー『アイアンマン』(Iron Man)2008年

アイアンマン(字幕版)

 ちょっといけ好かない天才社長がすごいパワードスーツで大活躍する。笑いどころが多々あり、テンポよく面白い。

 

ルイ・レテリエインクレディブル・ハルク』(The Incredible Hulk)2008年

インクレディブル・ハルク(字幕版)

 怒ると手をつけられなくなる男の話。冒頭のブラジルの雑踏での追いかけっこがとても良い。変身しても下半身を露出しないように、伸びるズボンを探すというのは可笑しいですね。ハルクになった後に恥じらいだりするんだろうか。

 

ジョン・ファヴローアイアンマン2』(Iron Man2)2010年

アイアンマン2 (字幕版)

 スーツの着脱方法がどんどんかっこよくなっていく。あんなに自信満々に振舞っていた社長が徐々に弱り、ようやく人に頼ることを知る。自暴自棄になり、アイアンマン姿で主催した自宅パーティのシーンは、バカバカしくも哀れであった。

 

ケネス・ブラナーマイティ・ソー』(Thor)2011年

マイティ・ソー (字幕版)

 空から筋肉男が降ってくる話。ソーの武器はハンマーなんだけど、何を叩いてもいちいち「コーン」と効果音がするのが微笑ましいです。ロキはいい具合に腹が立つ表情をしています。

 

ジョス・ウェドンアベンジャーズ』(Avengers)2012年

アベンジャーズ (字幕版)

 NYを襲う宇宙人に対抗するため、ヒーローが集結する。この映画だけは過去に観たことがあったが、こうして関連作品を見た後だと、面白みが倍増する。

 社長とハルクが大活躍するのだが、シールドのエージェントの皆さんに見せ場があるのが良い。はしゃいだり、強い信念を見せたりしてアベンジャーズの結束を図ろうとするコールソンには心からお疲れ様と言いたい。洗脳から立ち直ったのち、ノールック射的などキレキレの弓術で活躍し、見る人すべてに弓矢への憧れを植え付けたであろうホークアイは個人的MVP。

 

デヴィッド・シルヴァーマン『ザ・シンプソンズ MOVIE』(The Simpsons Movie)2007年

ザ・シンプソンズ MOVIE (吹替版)

 アラスカ先住民族のパワーを受け取った平凡な父親・ホーマーが、環境保護団体からスプリングフィールドの街を守る英雄譚。MCUをぶっ続けで見るのは結構大変なんです。

 

シェーン・ブラック『アイアンマン3』(Iron Man 3)2013年

アイアンマン3 (字幕版)

 アベンジャーズでの戦いから1年。またあんな強大な敵が出てきたらどうしよう…と不安からの強迫観念でとんでもない数のスーツを作り続けていた社長。それを襲うめっちゃ体温の高い敵が現れるという話。今回は試作中のスーツしか手元にないという状態なので、社長の戦力は大幅にダウンしてしまっている。でもその制限があるからこそ、3作目にしても緊張感のある内容となっていて面白かった。

 

アラン・テイラーマイティ・ソー ダーク・ワールド』(Thor: The Dark World)2013年

マイティ・ソー/ダーク・ワールド(字幕版)

 大変な状況でこそコミカルさを忘れない映画。ロキとソーの共闘、ただの変態となったセルヴィグ先生、あとナタリー・ポートマンに胸が熱くなります。9つの世界をあっちに行ったりこっちに行ったりしながら戦うラストでは、右往左往するハンマーから目が離せません。

 

アンソニー・ルッソジョー・ルッソキャプテン・アメリカ ウィンター・ソルジャー』(Captain America: The Winter Soldier)2014年

キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー (字幕版)

 これはとんでもなく面白かった。裏切りとか疑心暗鬼とかいうストーリーはまあ置いておいて、とにかく次から次に飛び出るアクションシーンがすべてかっこいい。キャプテンは他のヒーローと違って、「盾を投げる」程度しか飛び道具がない。高いところからビームでドーンとするのではなく、船の制圧とか、エレベーターからの脱出とか、いちいち全員殴っていくのである。そこがいいんですよ。

 

ジェームズ・ガンガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(Guardians of the Galaxy)2014年

ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー(字幕版)

 ダメなやつらが星を救う話。タイトルの入り方がかっこよかった。なんかコロコロコミックみたいだ。せめてジャンプくらいが良い。

 

ポン・ジュノ殺人の追憶』2003年

殺人の追憶(字幕版)

 田舎町で起こる連続殺人に立ち向かう話。暴行して偽の証言を取ろうとする地元警察官と、冷静に証拠を積み上げようとするソウルからの警察官とがコンビを組むが、あまりに不条理な犯行に次第に互いの行動も入れ替わっていってしまう。とにかく印象的なシーンがたくさんあって、コンクリート工場そばで襲われる時のスリリングな場面、線路が鈍く光るトンネルのショット、そのトンネルとつながるかのようにも見える排水溝など。終始ドタバタしているけれど、そうしたシーンの緊張感との落差が良いアクセントとなっており見ごたえがあった。

 

アラン・J・パクラ大統領の陰謀』(All the President's Men)1976年

大統領の陰謀 (字幕版)

 この時代にいちいちツタヤでソフトをレンタルしているのだが、近場のツタヤのMCU関連のソフトが軒並み貸出中。やむなくMCUラソンを中断。

 『ウインター・ソルジャー』の参照元とのことで手を出しました。報道の自由、正義を行うことへの意志みたいなのは強く感じることができる。しかし話についていくのは結構大変ではある。

 

S・S・ラージャマウリバーフバリ 王の凱旋』(Baahubali 2: The Conclusion)2017年

バーフバリ2 王の凱旋(字幕版)

 宇宙最強戦士って書いてあるし、アベンジャーズに出るんですよね?キャプテンとソーとホークアイを足した分くらいは働きそう。

 

それでも見せびらかしたい『消費資本主義!』

消費資本主義!: 見せびらかしの進化心理学

ジェフリー・ミラー『消費資本主義!』

出版社:勁草書房

翻訳者:片岡宏仁

原著:Spent. Sex, Evolution and Consumer Behavior (2009)

 

 私たちは地球でもっとも発展した知的生命体のはずだ。にもかかわらず、なぜハマーなんていう非効率なものを所有したがるのだろう。燃費は悪いし、比較的に故障だってする(※私は事実かどうか知りません)。人生のほとんどは「働く、買う、物欲を満たす」というループで占められてしまっている。なんでこんなことになったのか。この疑問に、進化心理学の視点で答えを導こうというのが本書である。

 この消費の背景にあるのは、「無意識の見せびらかし」である。もちろん自身の快楽追求のための消費もあるが、本書では「見せびらかし消費」に注目して論が進められる。

 生物学において、個々人がどんな性質・特性を持っているかを他人が知覚できるように示すシグナルを「適応度標示」という。たとえばクジャクの羽なんかがそれにあたる。自身の社会的・性的な地位と結びつくような指標である。どのような標示が有効であるかは、その時々の環境・文化によって異なる。人の場合、知性や経済性が指標として重視されているだろう。ハマーに関していえば、飛び抜けた購入価格やバカバカしい維持費を支払うことのできる経済性を持っていることを間接的に示す材料となる。

 こうしたシグナルは、なにも自分自身をよりよく見せようとするものだけではない。自分の特性を相手に示すためにも使われる。人の性質は中核六項目と言われる要素で説明できるという。それは、一般知性とビッグファイブ性格特性(経験への開放性、堅実性、同調性、安定性、外向性)からなる。イコライザのようにこれらの性質の強弱が組み合わさり、個人の特徴となる。人は極端に自分と異なる人を好まない。そのため、自身の性質を示すためのシグナリングをして、性質の近しい人の目を向けようとしているというわけである。

 ところが実際には、他人は自分をそんなに注目しているものだろうか。また、一定時間会話をすれば、人は他人の特性を正しく見定める能力があると言われもする。わざわざ見せびらかしに力を入れる必要があるのだろうか。

 そこにマーケティングの入り込む部分がある。「それを持つことで他の人が羨む」「平均未満の能力を製品が補う」という、幻想のようなものを売り込むのだ。本当は見せびらかしは無駄が多いかもしれないし、ちょっと会話する方がよっぽど正確な評価につながるかもしれない。しかしそれでも人は見せびらかしを求める。

 マーケターにとってはとても興味深く、また消費者にとっては少し財布の紐を固くさせられる、そんな体験ができる。

ゲノム編集がやってくる『ゲノム編集の衝撃』

ゲノム編集の衝撃 「神の領域」に迫るテクノロジー

NHK「ゲノム編集」取材班『ゲノム編集の衝撃 「神の領域」に迫るテクノロジー

NHK出版(2016年)

 

 こんな報道もあったりして、いよいよゲノム編集技術と生活との接点が増えていきそうだ。そもそもゲノム編集とはなんなのか。研究が活況を示し始めた様子を追った本書は、その理解の助けにうってつけだ。 

 

ゲノム編集とはなにか

 ゲノムとはDNAの遺伝情報の総称である。4種類の塩基がコードする遺伝情報は、タンパク質の設計図となっている。生物の形や性質にも影響するこの設計図をいじることができたらどうだろう。

 人間は古くから品種改良という形で、この設計図を書き換えてきた。より収穫しやすく美味しい作物に、あるいはより従順で扱いやすい家畜にと、選別と交配を重ねてきたのだ。ガンマ線を照射して突然変異を引き起こそうという方法もあるものの、偶然に発生する変化を待つため、とても時間のかかる方法だ。

 1970年代に登場したのは、遺伝子組み換え技術である。生物の中から有用な機能をもった遺伝子を抜き取り、別の生物に挿入するというものだ。これはインスリンの生産拡大や、除草剤に強いダイズの生産などにつながった。しかし、こちらも偶然に頼った部分があり、必ずや期待した場所に遺伝子が挿入され、期待通りの機能が得られるというわけではない。やはりこちらも時間を要する。

 そして20年ほど前から扱われるようになったのがゲノム編集技術である。こちらは目的の遺伝子配列を探し出し、遺伝子を酵素で切断、その遺伝子が担っていた機能をなくしてしまう。品種改良や遺伝子組み換えのようにあてずっぽうなやり方ではないのだ。さらに、切断した部分に挿入したい遺伝子を持ち込んでおけば、切られた遺伝子の修復過程で希望の遺伝子を挿入することもできうる。こうしたゲノム編集は、2010年代にクリスパー・キャス9という技術が生まれたことで、より早く・簡単に・安価に実現できるようになった。

 

医療分野での期待

 ゲノム編集の適用が期待される分野の一つは、医療の分野である。

 例えば本書では、HIV治療への適用実験が紹介される。HIVは血液中の白血球に取り付いて増殖する。この時にHIVが足がかりにする白血球上の突起に関する遺伝子をゲノム編集で取り除き、HIVの増殖を抑えることができるというのだ。

 この他にも、筋ジストロフィーなどの様々な遺伝子疾患の治療での適用が期待される。しかしこのようなヒトへの適用を考える時、どこまでの改変を是とするかという議論は避けられない。下リンクの中国でのゲノム編集適用が問題となったように、自分好みのヒトを作るようなことがあって良いのか、倫理的な線引きが求められてもいる。

 

食品分野での期待

 冒頭の記事でもあったように、私たちの生活とゲノム編集との接点はまず食品から始まるのだろう。食料の生産性を向上する、栄養面を補強する、保存性を増す、扱いを容易にするといった目的のためにゲノム編集を適用できる。

 ゲノム編集は、これまでの品種改良や遺伝子組み換えに比べて安価であるのが利点である。運任せによる失敗の積み重ねは少ないし、一部の遺伝子機能を不活性にするだけなら自然界でも起こりうることなので、厳重に管理した上での品種開発をしなくてもいいかもしれないからだ。そうなれば、ゲノム編集品種は従来の食品との価格競争に負けることがなく、急速な広がりへの原動力になりうるだろう。

 しかし消費者としては、「食べても大丈夫なのか」というのが気になるだろう。特定の遺伝子機能を不活性にするだけならば自然界でも起こり得る。また、遺伝子組み換えと違い、特定の遺伝子配列だけに変化があるので、不測のことは起きにくい。これらをゲノム編集食品の安全性の根拠として挙げることはできる。一方で、やはり遺伝子を人為的に改変するのは変わらないし、長期的な影響評価はまだまだ必要かもしれない。

 また、そうした消費者に対し、食品の提供側はどのようなことをすれば良いだろう。そもそもゲノム編集食品を扱うのか、扱うとしてどうやって表示するのか、表示するとしても原料の品種までたどるようなトレーサビリティを確立できるのか。

 ゲノム編集食品を私たちはどう受容していくのか。そうした考えを深めていく助けとなる本だった。