自己正当化してない?『自分の小さな「箱」から脱出する方法』

自分の小さな「箱」から脱出する方法

アービンジャー・インスティチュード『自分の小さな「箱」から脱出する方法 人間関係のパターンを変えれば、うまくいく!』

出版社:太田出版

原著:LEADERSHIP and SELF-DECEPTION Getting out of the Box (2000年)

 

 「箱」とはなにか。自分の殻に閉じこもるとか、そんなことを思い浮かべていたけれど、その定義はちょっと違う。

 これをやったほうが本当はいいかな、と心によぎったことを、なんのかんのと理由をつけてやらない。こうして言い訳を作るような心の動きを「箱に入る」というのだ。

 本書内の例がとてもわかりやすい。夫たるあなたが寝ていると、子供が夜泣きする。妻は気付かず寝ているようだ。自分があやしに行けば妻は起きずに済む、という思いも浮かんだが、結局寝たふりをしてしまう。こうした時の心の動きとして、①自分は疲れているし普段は良い夫じゃないかという正当化、②これで起きないなんて妻は怠け者だという歪んだ視点の獲得、③そうした認識を自分の通念として持ち続けてのちの関係にも適用してしまう、ということが起こるという。こうした自己正当化、自己欺瞞のきっかけは、そもそも「子供をあやしにいった方がいい」という感情に背いたことにあるのである。

 なかなか身につまされる話だ。仕事で報告するタイミングを後ろ伸ばしにしてしまう、不要に相手に冷たく当たってしまう、電車で席を譲らずやり過ごすといった全てがなんだか当てはまりそうだ。うまくいかないのは相手が悪いとか、外的要因に求めようとすることが多いが、実際は自分自身が箱に入っていることが原因なのである。

 なぜ箱に入ってしまうのか、箱に入ると何が起こるのか、箱から脱出するにはどうすれば良いか、物語形式で進むのでスッキリと飲み込める。自身の心のコントロールの一助として有用な一冊だと思う。