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体当たり科学ロケ番組『村山斉の宇宙をめぐる大冒険』

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NHK BSプレミアム コズミックフロント☆NEXT

『村山斉の宇宙をめぐる大冒険 宇宙の始まりを探る』(2017/2/9)

村山斉の宇宙をめぐる大冒険 宇宙に終わりはあるのか?』(2017/2/16)

 

 素粒子物理学者・村山斉さんによる、宇宙ふしぎ発見とも言えるロケ番組である。ジップラインから屋内スカイダイビング、ピザ作りまで、体を張って宇宙の誕生から終わりまでを噛み砕いて解説してくれる。

 

1. 星空はタイムマシン

 まず訪れるのはハワイの最高峰・マウナケアの山頂。晴天率が高く湿度が低いため、天体観測に適した場所として、各国が天体望遠鏡を設置している。頭上に一面に広がる星空にも奥行きがあり、遠いものであるほど、我々の目に入る光は過去に発せられたものとなる。つまり、遠くの星を見ることは、過去の宇宙を見ることであるのだ。とはいえ、目に見える星は、宇宙に存在する星のごく一部だ。遠く暗い星を視認することはできない。すばる望遠鏡が捉えた銀河の姿の中には、地球から131光年も離れたものまである。

 

2. 膨らむ宇宙

 タイのチェンマイでは、毎年11月の祭りで数千のランタンを空に飛ばす。手元から浮かび上がっていくランタンのように、あらゆる銀河は地球から離れていっている。これは宇宙が膨張しているためだ。膨らみ続けているということは、その出発点となる小さな宇宙があったはずである。この、目に見えないほどの小さな宇宙が一気に膨張したというビッグ・バン理論を唱えたのは、ロシアの理論物理学者ジョージ・ガモフだ。

 どのようにこの膨張を確認することができるだろう。横をすり抜ける列車の走行音が、遠ざかるにつれ引き延ばされるドップラー効果というものがあるが、光でもこれと同じことが起こる。ロサンゼルスのウィルソン山天文台において、1929年にエドウィン・ハッブルは、遠い銀河ほど赤い色に見えることを発見した。これは、光の波としての性質によるもので、銀河が地球から遠ざかるにつれ波が引き延ばされ、光が赤くなる赤方偏移が起きたためだった。遠い銀河ほど赤いということは、遠い銀河の方が速い速度で地球から遠ざかっているということで、これが宇宙の膨張を裏付けたのである。

 ハッブルの発見の35年後、人間はビッグ・バンの姿を電波として捉えた。これは、光の波が引き延ばされに引き延ばされ、ついには不可視の波となったからだ。この電波はあらゆる方向から地球に届いており、ラジオのノイズの一部にもなっている。

 

3. 偶然が生み出した世紀の発見

 ベル研究所のホーンアンテナが、全く偶然にそのビッグ・バンの姿を捉えた。ロバート・ウィルソン博士らは、指向性の高くより狭い範囲の波をとらえるこのアンテナを使うことで、周囲の様々なノイズをカットして宇宙からの波を観測していた。それでも残ったノイズが、ビッグ・バンからのものだったのだ。このノイズをもとに初期の宇宙を温度ごとに色付けて地図を描くと、非常にわずかな温度差でまだらな模様が描かれる。

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4. 宇宙の始まりを探る暗号

 ブラジル北部に広がる白い砂丘には、雨季になると窪地に水がたまり、まだらな模様を作り出す。宇宙の始まりにおけるまだら模様も、水が溜まるように、水素やヘリウムが集まりだしている部分があることからできている。宇宙は一様でなく、でこぼこであったのだ。このでこぼこを作り出したのが、ダークマターであるという。

 

5. 謎の物質ダークマター

 ダークマターは見ることも触ることもできないが、我々の周囲にたくさん存在している。物質を細かく分解していくと、素粒子というものに分けることができ、それはこれまでに17種類確認されている。我々の周囲にあるものは全て「アップフォーク」「ダウンフォーク」「電子」によりできている。目に見える光の粒は「フォトン」など、これまではこの17種類であらゆることが説明できると考えられていたが、ダークマターはどの素粒子でできているのか、またダークマター自体も何種類あるのかわかってはいない。ダークマターは重力を持ち、この存在が水素やヘリウムの偏在を促したとされる。

 ダークマターの存在自体は80年前には指摘されていた。銀河は秒速1000kmもの速さで動いているが、銀河団からバラバラに飛び散らない。これを引きつけ止めているのがダークマターではないかというのである。ダークマターは宇宙の中に通常の物質の5倍の量が存在するという。このダークマターがなければ、物質の存在に偏りが生じず、星も我々も誕生することはなかった。

 ダークマターとは何か、スイス・ジュネーブの大型加速機では、陽子同士を光速で衝突させることでビッグ・バンに近い状態を作り出し、その正体を探ろうとしているという。

 

6. 「宇宙の終わり」の始まり

 50億年前に生まれた太陽もいずれはその燃料を使い尽くし、燃え尽きる。燃え尽きる前には地球も飲み込むほどに膨張し、小さく残った星が周囲のガスを照らし星雲となり、いずれ真っ黒な場所になる。これが太陽系の終わりである。では宇宙の終わりはどうだろう。

 約138億年に起きたビッグ・バンで、星の原料となる水素ができた。ダークマターが水素を偏在させ、その密度の高い場所から星ができた。星はこの水素を原料に輝いてきた。全ての星がこの燃料である水素を使い果たすのには100兆年かかるとも言われる。

 しかしそのもっと前に宇宙は終わるという説もあった。銀河間の引力で膨張の速度がある時点で弱まり、宇宙が縮んでいくビッグクランチが起こるのではないかと言われていた。だがこの説は、宇宙は加速膨張しているという観測で否定された。これは超新星爆発の観測によるもので、発する光の強さが同じこの現象を使うことで膨張の速度がわかるのである。

 

7. 摩訶不思議なダークエネルギー

 膨張の速度が速くなっているならば、ビッグ・バン後に膨張を後押しした何かがあったということだ。この正体は、重力と反対の力を持つダークエネルギーではないかとされる。不思議なことに、このダークエネルギーは宇宙が大きくなるほどその量を増やし次々に宇宙空間を満たしていくという。

 

8. ダークエネルギーが支配する宇宙の未来

 問題はダークエネルギーの増え方だ。緩やかに増えていれば今のように膨張を続けるが、急激に増加した場合、膨張の力が引力に打ち勝ち、星々、そして星自身もバラバラに細かくなってしまう。ビッグリップという、宇宙の未来の一つだ。

 

9. ダークエネルギーの怪

 現存するダークエネルギーの量は、理論上導出されていたよりも120桁差で少なかった。なぜこんなにも少ないのか。その答えとなる鍵が、膨大な数の宇宙があるというマルチバースの考えだ。最初にできたエネルギーで満ちた宇宙が膨張する中で、いくつもの宇宙に枝分かれしたというのだ。これら膨大な宇宙は、それぞれ全く性質が異なり、含まれるエネルギー量も違う。こうしたたくさんの宇宙のほとんどは、ダークエネルギーが大きく、あっという間に引きちぎられてしまったという。我々のいる宇宙はたまたま膨張を続ける世界だったのだ。