あるのやらないのやら『謎の凶星「ネメシス」』

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『謎の凶星「ネメシス」 大量絶滅の真相に迫る』(2016/3/31放送)

引用元:THE UNIVERSE  Nemesis: The Sun's Evil Twin(アメリカ 2011年)

 

 1984年に発表された論文では、地球上ではこれまで生物の大量絶滅が計12回起きてきたことが示された。その上、大量絶滅の発生にはおおよそ2600万年の周期性があることが示唆されたのである。しかし地球内でこのような長期の規則性のあるイベントが起こるとは考えにくい。一体何が周期的な大量絶滅の原因となっているのだろう。

  大量絶滅と聞いてまず思い起こすのは、6500万年前の恐竜の絶滅だろう。絶滅の要因には様々な説が唱えられているが、小惑星の衝突に起因する環境変化によるものとする隕石説が有力だ。ユカタン半島にあるクレーターがその隕石の痕跡であるといわれる。

 もし、他の大量絶滅もこのような天文的なイベントで引き起こされているとしたらどうだろう。周期的な隕石落下はどうしたら起きるだろう。ここで凶星「ネメシス」の仮説が浮かび上がってくる。生物学、地質学、天文学と、分野横断的に真相に迫ろうとする流れは非常にワクワクさせられる。

 ネメシスとは、太陽の伴星として仮定された天体である。恒星の多くは2つの星が互いの重力で結びついた連星であり、2つの星の重量に差がある場合は、重い主星のまわりを軽い伴星が楕円軌道する。伴星・ネメシスは2600万年周期で太陽に近づき、太陽系のまわりを囲むとされる氷の小天体群・オールトの雲をかき乱す。かき乱された小天体は彗星となり、いくつかが地球に降り注ぐという仮説だ。

 この仮説を否定するような反証はないものの、何度か繰り返された観測ではネメシスを発見することはできていない。ネメシスは太陽系より2.8光年以内の距離に存在するとされているが、2009年打ち上げの広域赤外線探査衛星WISEでもこの範囲からの発見はなかった。ネメシスはあるのかないのか、まだわからないというところで番組は幕を閉じる。

 あの手塚治虫が訳した本があるなど、ネメシスの考えは有名なようだが、私はこの番組で初めて知った。地球上の絶滅の原因を広い宇宙に求めるという壮大な仮説はとても魅力的だ。ネメシス以外にも、太陽系が銀河円盤の水平面を通過することを要因とする説、未知の惑星Xを原因とする説も紹介された。また、最近ではダークマターオールトの雲を乱しているという考えもあるようだ。

 というように内容をざっくりとまとめてはみたが、NHK公式の紹介記事はこれをまさかのデート講座形式にしてしまうヤバさなので、ぜひご覧いただきたい。