俺はいつまで男子でいるつもりだ問題『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』

貴様いつまで女子でいるつもりだ問題 (幻冬舎文庫)

ジェーン・スー『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』

幻冬舎(2014年)

 

 「男の子の方がライフプランを考えないよね」という話を先日した。自分を見れば、確かにと納得するしかない。結婚する・しない、仕事する・しない、子どもをつくる・つくらないという人生の選択をどの年齢で行うか、男性は女性よりも身体的制約が少ないからだろうか。それに、結婚に伴い姓を変えるかどうかなど、選択に伴い考慮すべきことは女性の方が多いようにも思える。誤解を恐れず言えば、男性の方が漫然と、選択肢へのタイムリミットを気にせず過ごしていられる。いつまでも男子のままでいられるのだ。

 本書の中で、「女性は家庭に入り家を守る」という価値観は、「男性が仕事で稼いで」という枕詞の上に成り立つとさらりと語られる。ああそうかと腑に落ちる。本当に、いまさら本当に恥ずかしいのだが、昔からの男女の役割分担は選択肢の一つでしかないという社会になる、目指していくという中で、いかに自分が「男性としての価値観を変えること」に無頓着だったか気づいたのだ。「従来の社会に女性が進出するのを受け入れる」のが男女共同参画であるという感覚が私の中にあったのである。もちろんそれは間違いだ。

 「女性は家庭に入る」価値観を崩していくなら、その枕詞だって意味をなさない。私は、私の中の男性としての価値観の更新に向かい合わなければならない。いつまでも男子ではいられないのだ。それならば、ぼんやりしたライフプランも少し解像度を上げよう。自分自身は、パートナーとは、どうしていきたいかもっと対話しないといけないな。

 一方でそれは、生きづらさを軽減もしてくれるはずだ。仕事をし続けて家族を養うという役割以外に視野を広げられる。なんとしても仕事にしがみついて踏ん張る、といった足枷を無くしてくれるだろう。それに、「男が仕事」の価値観のもとで会社の同僚を見れば、大して仕事をせずに在籍し続けることが目的の人が一定数いることも理解できる、と本書は痛快に教えてくれる。人間関係、社会でサバイブするための知恵にもなるのだ。

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 著者のポッドキャストも聞いているが、ぼんやりと感じる生きづらさがどんどん明確に言語化されていくのがすごい。「おばさんの互助会番組」とのことではあるものの、性別・年齢を超えて、しぶとく生き抜く姿勢に力をもらえる。

 ところで、私が切り取ったのは本書のごくごく一部でしかないので、決してジェンダーに関する内容だけの本ではないことは付記しておきたい。タイトル通りの話題はもちろん、「東京は地方出身者の理想を具現化する植民地か」など、女子でなくとも膝を撃ちたくなる視点が盛り沢山である。