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本当に人間は多すぎるのか『地球を食い尽くすのは誰?~“人口爆発”の真実~』

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放送:NHK-BS1 2015年10月27日(再放送)
原題:POPULATION BOOM(オーストリア 2013年)
製作:Nikolaus Geyrhalter Filmproduktion

 

 世界の人口は72億人に達した。19世紀末に16億人、20世紀半ばに25億人、20世紀末で60億人なのだから、恐ろしい勢いで増えている印象を持つ。
 でも人間は本当に多すぎるのだろうか。世界の全人口をオーストリアに詰め込んだとしても、一人あたり11㎡の土地は割り当てられるという番組内の話には驚いた。もっといっぱいいっぱいのイメージを持っていたからだ。ちなみにオーストリアの国土面積は北海道と同程度、日本全体の20%強ほどである。
 はたして“人口爆発”の問題とはなにか。地球が収容できる人口はどれほどだというのか。多すぎるとするなら誰を減らすというのか。監督であるWerner Booteが各地を巡り、これらの疑問に答えようとする。

 ぼくが見たこの再放送のあと、10月29日に中国の一人っ子政策は撤廃された。番組内でも中国を訪れており、政策を進める政府関係者、政策の問題点を指摘する専門家それぞれにインタビューを行っている。
 この時挙げられた問題点は、やはり少子高齢化である。社会保障制度の確立が追い付かず、若年世代の負担は増加、ひいては経済成長の鈍化につながるということだ。日本に出生制限のような政策はないが、似たような状況ではないだろうか。
 また、中国では男性の数が女性を上回るようになったという話はおもしろい。なぜそのような性比の偏りが生まれたのだろう。

 中国が一人っ子政策を実施した背景には、食糧供給が追い付かないのではないかという懸念があった。先進国は、アジア・アフリカでの人口増加率に注目し、食糧や化石燃料といった資源の枯渇、またそれらの生産や利用に伴う環境破壊につながると警鐘を鳴らす。しかし、これらの問題の要因は人口爆発ではないのではないかとこの番組は指摘する。
 出生率の高いケニアでは確かに食糧不足が課題となる。しかし、その原因は貧困にあるというのだ。資源の消費も、環境の破壊も、富を持つ先進国での浪費が引き起こしているのであり、貧しい国の人口増加にその原因を見出そうとするのは責任転嫁も甚だしいのではないかと。

 監督は最後に、世界一乗車率が高いであろうバングラディシュの列車の屋根に乗る。見ず知らずの人と密着した、信じられない人口密度の環境だ。トンネルがあれば誰ともなく頭を低くするよう押さえつけ、揺れるたびに互いの体につかまり合う。その様子からは、人が多くても助け合うことができる、人口が増えすぎたと悲観することはないのだというメッセージすら感じさせられた。