幸福のデザイン『愛の本』

菅野仁『愛の本 他者との〈つながり〉を持て余すあなたへ』 ちくま文庫(2018年) 幸福とは何か。その具体性は異なるものの、個人ごとのある一定の条件を満たすことだと著者は言う。その条件とは、「自己充実をもたらす活動」および「他者との交流」である。…

人工生物への期待と恐れ『合成生物学の衝撃』

須田桃子『合成生物学の衝撃』 文藝春秋(2018年) 生命を「工学」する 本書は2つのパートに分けることができるだろう。そのひとつが生物学を工学化する営みのドラマである。 生物はDNA配列というプログラムでコードされたシステムで動いているということが…

自由のために『ふだんづかいの倫理学』

平尾昌宏『ふだんづかいの倫理学』 晶文社(2019年) 本書の冒頭は、いくつかの例題から始まる。ちょっと紹介してみよう。 1)あなたは都道府県知事。賄賂を渡すから発注してほしいと工事業者。どうする? 2)結婚をしようとした相手が重い病気に。どうす…

それでも見せびらかしたい『消費資本主義!』

ジェフリー・ミラー『消費資本主義!』 出版社:勁草書房 翻訳者:片岡宏仁 原著:Spent. Sex, Evolution and Consumer Behavior (2009) 私たちは地球でもっとも発展した知的生命体のはずだ。にもかかわらず、なぜハマーなんていう非効率なものを所有したが…

ゲノム編集がやってくる『ゲノム編集の衝撃』

NHK「ゲノム編集」取材班『ゲノム編集の衝撃 「神の領域」に迫るテクノロジー』 NHK出版(2016年) こんな報道もあったりして、いよいよゲノム編集技術と生活との接点が増えていきそうだ。そもそもゲノム編集とはなんなのか。研究が活況を示し始めた様子を追…

渇望と虚しさ『ブッチャーズ・クロッシング』

ジョン・ウィリアムズ『ブッチャーズ・クロッシング』 出版社:作品社 訳者:布施由紀子 原著:BUTCHER'S CROSSING (1960年) 1873年のアメリカ・カンザス州〜コロラド準州を舞台にした小説。架空の街・ブッチャーズ・クロッシングにやってきた若者・アンドリ…

人と機械のつきあい方『デジタルアポロ』

デビット・ミンデル『デジタルアポロ 月を目指せ 人と機械の挑戦』 出版社:東京電機大学出版局 翻訳者:石澤ありあ 原著:DIGITAL APOLLO: Human and Machine in Spaceflight (2008) 自動車のクルーズコントロールって使います?アクセルを踏まなくても設定…

麻薬カルテルの経営学『ハッパノミクス』

トム・ウェインライト『ハッパノミクス 麻薬カルテルの経済学』 出版社:みずす書房 翻訳者:千葉敏生 原著:NARCONOMICS How to Run a Drug Cartel (2016) 映画『ボーダーライン』は、アメリカとメキシコの国境の街を舞台に、麻薬カルテルの捜査を描いた作…

間をつなぐひと『おクジラさま』

佐々木芽生『おクジラさま ふたつの正義の物語』 集英社(2017年) 本書は2017年に公開されたドキュメンタリー映画を監督自身が書籍化したものである。イルカ漁をめぐり和歌山県太地町で巻き起こる対立を、「中立な」視点で捉えようとしたものである。 こと…

苦難を乗り越えて『鳥たちの旅』

樋口広芳『鳥たちの旅 渡り鳥の衛星追跡』 NHK出版(2005年) 小型計測機器を使い動物の移動や行動を計測するバイオロギング研究。本書はその最初期にあたる研究を紹介する内容と言えそうだ。 鳥の中には、年中同じ場所にとどまる「留鳥」と、季節的に移動す…

電脳じゃなくてもハックできる『つくられる偽りの記憶』

越智啓太『つくられる偽りの記憶 あなたの思い出は本物か?』 化学同人(2014年) 私が私であることの証明を記憶に求めるならば、本書が示す内容は恐ろしいと思えるだろう。 人の記憶は、あとからいくらでも歪められる。記憶は時系列に積み上がっていくもの…

もうハトから目を離せない『ハトはなぜ首を振って歩くのか』

藤田祐樹『ハトはなぜ首を振って歩くのか』 岩波書店(2015年) ハトはなぜ首を振って歩くのか。テレビやネットの豆知識としてメジャーになった感もあり、理由を知っている人も多くいるだろう。でも鳥見をしていれば、カモなんかは首を振らずに歩いているこ…

カレーライス、だあいすき『カレーライスと日本人』

森枝卓士『カレーライスと日本人』 講談社学術文庫(2015年) 私の住む札幌でカレーといえば、やはりスープカレーである。スパイスの効いたさらりとしたスープに盛りだくさんの具を浮かべ、ライスを浸して食べる。元々は薬膳をヒントに札幌で生み出されてい…

境界を揺れる『プラネタリウムの外側』

早瀬耕『プラネタリウムの外側』 ハヤカワ文庫JA(2018年) BBCのドラマ『シャーロック』第3シーズンのラスボスである恐喝王・マグヌセンは、様々なネタをもって要人をも強請る。彼の邸宅に膨大な資料が隠されていると目されたが、実際には物的証拠は何一つ…

ささやかな観察と記録『ナショナル・ストーリー・プロジェクト』

『ナショナル・ストーリー・プロジェクト』 出版社:新潮社 編者:ポール・オースター 訳者:柴田元幸 他 原著:I Thought My Father Was God And Other True Tales From NPR's National Story Project (2001) 『家、ついて行ってイイですか?』というテレビ…

ビジョンで惹きつけろ『経営の指針』

平野正雄『経営の針路 世界の転換期で日本企業はどこを目指すか』 ダイヤモンド社(2017) 冷戦後の(だいぶ)マクロな経済変化をグローバル・キャピタル・デジタルの3要素から読み取り、それに対する日本企業の現状とこれからが述べられたものである。 大き…

またも良かった『母の記憶に』

ケン・リュウ『母の記憶に』 早川書房(2017年) 中国生まれ米国育ちの小説家による短編集第2弾。前短編集『紙の動物園』も信じられないほど面白かったが、今回もとんでもなく面白い16編が詰まっている。 SF・ファンタジーに分類されるケン・リュウの作品の…

豊かで、明るく、満ち足りた場所『これが見納め』

『これが見納め 絶滅危惧の生き物たち、最後の光景』 出版社:みすず書房 著者:ダグラス・アダムス / マイク・カーワディン 訳者:安原知見 原著:Last Chance To See (1990)

むかわ町のプロジェクトX『ザ・パーフェクト』

土屋健『ザ・パーフェクト ハドロサウルス発見から進化の謎まで』 誠文堂新光社(2016年)

継続観察の力『サイチョウ』

北村俊平『サイチョウ 熱帯の森に種をまく巨鳥』 東海大学出版(2009年)

あなたの知らない野外調査の世界『熱帯アジア動物記』

松林尚志『熱帯アジア動物記 フィールド野生動物学入門』 東海大学出版(2009年)

未来につなぐ『二万年の奇跡を生きた鳥 ライチョウ』

中村浩志『二万年の奇跡を生きた鳥 ライチョウ』 農山漁村文化協会(2013年)

ガラスの檻に囲まれて『オートメーション・バカ』

『オートメーション・バカ 先端技術がわたしたちにしていること』 出版社:青土社 著者:ニコラス・G・カー 訳者:篠儀直子 原著:THE GLASS CASE: Automation and Us (2014)

清く、苦しい『グラン・ヴァカンス』

飛浩隆『グラン・ヴァカンス 廃園の天使Ⅰ』 早川書房(2002年)

愛をAIに乗せて『アイの物語』

山本弘『アイの物語』 角川書店(2006年)

それでも魚を食べたい『鮭鱸鱈鮪 食べる魚の未来』

『鮭鱸鱈鮪 食べる魚の未来 最後に残った天然食料資源と養殖漁業への提言』 出版社:地人書館 著者:ポール・グリーンバーグ 訳者:夏野徹也 原著:FOUR FISH: The Future of the Last Wild Food (2010)

見えざる手を導く人『データの見えざる手』

矢野和男『データの見えざる手 ウエアラブルセンサが明かす人間・組織・社会の法則』 草思社(2014)

そこに愛も生まれる『そもそも島に進化あり』

川上和人『そもそも島に進化あり』 技術評論社(2016)

料理しか食べられない『火の賜物』

『火の賜物 ヒトは料理で進化した』 出版社:NTT出版 著者:リチャード・ランガム 訳者:依田卓巳 原著:Catching Fire - How Cooking Made Us Human (2009)

撹乱と保全『巨大津波は生態系をどう変えたか』

永幡嘉之『巨大津波は生態系をどう変えたか 生きものたちの東日本大震災』 講談社ブルーバックス(2012)