今月みたもの(2019年5月)

 まだまだMCUラソンは続くのだ…!

 

テイラー・シェリダンウィンド・リバー』(Wind River)2017年

ウインド・リバー [DVD]

 と言いつつ早速脱線したが、ホークアイとワンダが出ているからいいじゃない。だってもうツタヤのMCUコーナーが空っぽだったもので…。

 真っ白な雪原を荒野に見立てた西部劇といった面持ち。緊張感があってよかった。それに、北米の大自然と人、みたいな構図にも僕は弱い。真っ白なスナイパー・ホークアイもカッコ良い。

 アメリカの暗部を描く、みたいな煽りにもあったように、ネイティブアメリカンをめぐる現状もしっかり描かれている様子。それは彼らに対する迫害や差別といったものだけではない。ラストシーン、我が子を悼み伝統であろうフェイスペインティングをするネイティブアメリカンの父親ではあるが、「わからないから適当だ」という。ネイティブアメリカンであるとはなんなのかを考えさせられるシーンだ。

 

ジョス・ウェドンアベンジャーズ エイジ・オブ・ウルトロン』(Avengers: Age of Ultron)2015年

アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン (字幕版)

 ロボットが反乱します。あんまり楽しみきれなかった。

 

ペイトン・リード『アントマン』(Ant-Man)2015年

アントマン (字幕版)

 小さくなってさあ大変!という目線は楽しかった。バスタブに落ちるとかほんと怖い。でもそれはやっぱりスケールの小さなことで、汽車をも巻き込む大乱闘を繰り広げていても、実際には子供のおもちゃが倒れたほどにしか見えない。そうした目線の転換をうまく織り交ぜているのが楽しかった。 

 

アンソニー・ルッソジョー・ルッソ『シビル・ウォー キャプテン・アメリカ』(Captain America: Civil War)2016年

シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ (字幕版)

 世界を守るためと努力してきたアベンジャーズではあるが、その戦いに巻き込まれて命を落とした一般人もいる。その遺族から容赦なく敵意を向けられることで分裂してしまうアベンジャーズ。なかなか暗い映画である。空港の戦いはしっちゃかめっちゃかで楽しい。

 

ライアン・クーグラーブラックパンサー』(Black Panther)2018年

ブラックパンサー (字幕版)

 ワカンダ・フォーエバー!

 

スコット・デリクソンドクター・ストレンジ』(Doctor Strange)2016年

ドクター・ストレンジ (字幕版)

 ティルダ様がかっこよく、マントがかわいい映画。ドクターがゴリ押しの訪問販売みたいな戦法で勝利するのは笑った。 

 

ジョン・ワッツスパイダーマン:ホームカミング』(Spider-Man: Homecoming)2017年

スパイダーマン:ホームカミング (字幕版)

 親近感のあるスパイダーマンというか、親の気持ちで応援したくなるスパイダーマン。人助けを最優先にするなんて本当に偉い…。彼女のお父さんがアレで本当に残念だったね…。

 

ジェームズ・ガンガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』(Guardians of the Galaxy Vol.2)2017年

ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス (字幕版)

 ちょっと音楽の力を借りすぎじゃないですか?でもヨンドゥの葬式は泣きました。血の繋がらない誰かと家族になっていく話。

 

タイカ・ワイティティマイティ・ソー バトルロイヤル』(Thor: Ragnarok)2017年

マイティ・ソー バトルロイヤル (字幕版)

 ソーとロキが兄弟漫才している映画。こんなにボケ倒す方でしたっけ?ハルクは意外と話の通じるやつになりました。そんなハルクに「日は沈む日は沈む…」と唱え続けるソーは本当にバカっぽくて最高でした。

 

アンソニー・ルッソジョー・ルッソアベンジャーズ インフィニティ・ウォー』(Avengers: Infinity War)2018年

アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー (字幕版)

 重苦しいアベンジャーズ。サノスの物語。人間味があって、ちょっぴりネジが飛んでるけど理性的なサノスは、敵としてすごく魅力的。そして、これまでのMCUを観てきたことを前提にするからこそのスピーディーな展開。あのキャラもこのキャラもバチっと必要不可欠な見せ場があるし、これまでの映画の背景を踏まえての成長もしっかり描く。そうでありながら容赦なく倒されていく。すごい映画ですよ…。

 

アンソニー・ルッソジョー・ルッソアベンジャーズ エンドゲーム』(Avengers: Endgame)2019年

「エンドゲーム ポスター」の画像検索結果

 3時間の上映時間と聞いて不安ではあったのですが、めちゃくちゃ楽しい映画でした。名所めぐりというか同窓会というか、主要な人物のルーツを再訪するような構成は、これまでのMCU映画の歴史を振り返る思い出ムービーのようでよかった。その上ティルダ様が出てくるので加点しかありません。減点するとすれば、あっさり優しいやつになったハルク。

 僕にとってこの映画は、アメリカのケツ・キャップの映画でした。エレベーターの戦い再現となるかというところや、盾をバキバキにされてもなお立ち上がろうとするところ、やはりとびきり心が清らかであったこと、「左から失礼」からの「アッセンブル!」。泣くわ。友情・努力・勝利タイプです。

 こうしてなんとかエンドゲーム上映期間に滑り込み、僕のMCUラソンも終了したのでした(2本見ていないことは承知してます。いいじゃない、結構大変なんだよ)。

自由のために『ふだんづかいの倫理学』

ふだんづかいの倫理学 (犀の教室Liberal Arts Lab)

平尾昌宏『ふだんづかいの倫理学

晶文社(2019年)

 

 本書の冒頭は、いくつかの例題から始まる。ちょっと紹介してみよう。

1)あなたは都道府県知事。賄賂を渡すから発注してほしいと工事業者。どうする?

2)結婚をしようとした相手が重い病気に。どうする?

 

 ふたつはどちらも倫理の問題だ。前者に関しては「受け取るべきでない」で意見が一致するかと思う。でもなぜそんな判断になるのか。「法律で決まっているから」でもいいけど、どうして法律として定めなくてはならなかったのだろう。

 後者については意見が分かれるだろう。「みんな違う、正解なんてない」となる。どうしてこちらの問題には、従うべき方針をだれも定めてはくれなかったのだろう。

 私たちの周りには、倫理が空気のように存在している。存在感は薄いかもしれないけれど、それがないと生きにくい。人間が他者との関係の中で「よく生きる」ために倫理がある。そして、ときには乱立し対立することもある倫理を整理し、基本原理を明らかにし、人間の選択をよりよいものにしようというのが倫理学というわけだ。

 

 さて、他者との関係というのは「身近さ」の強度によって分けることができるという。究極的に身近なのは自分自身、すなわち「個人」である。身近さの強度でいえば0である。その対極となるのは「社会」だろう。不特定多数の人間の集まりはまったく身近さがない。

 個人を支える倫理は「自由」だ。他人に干渉されない権利を「自由」だと考えることもできる。でももっといえば、各個人でしか判断をできない幸福というものを、各個人が見出して、各個人が追求する、それこそが「自由」だと考えることができるという。

 しかしほんとうに好き勝手に自由を追求しては、他人の自由を侵害するかもしれない。ひとたびそれを許せば、自分自身の自由だって脅かされる。そのために社会は「正義」のもとで運営される。平等や公平を目指し、調整や交換、分配によって天秤の傾きをなくそうというのだ。冒頭の例題のひとつめは、この「正義」の倫理のもとにある。社会を運営するための倫理なわけだから、みんなが共通認識をもって当然なのだ。

 

 他者との関係が「個人」と「社会」の二極しかないかというと、もちろんそんなことはない。家族とか友人とか恋人とか同僚とか、身近さのグラデーションの中に色々な関係が見えてくる。「かけがえのない身近な関係」である。

 こうした身近な関係で働く倫理を、本書では思い切って「愛」としている。あなたにここにいてほしい、そのための倫理というわけだ。「愛」にもいろいろあって、共通なものがあるために結びつくもの、欠けているものを補うために結びつくものがあるだろう。互いがなにを大事にしているかによって違うのだ。したがって、冒頭の例題のふたつめは、ふたりで協議し、ふたりだけの結論を出すしかないのである。

 

 倫理とか道徳というのは、ああしなさい・こうしなさいと押し付けられるもののようなイメージもある。思えば道徳の授業というのはルールを意識させるようなところもあった。そうした義務感を伴うような倫理を、ここでは「守りの倫理」と呼んでいる。

 本書を読めば、もう一歩先に踏み出して「攻めの倫理」を意識するようになる。なくてもいいかもしれないけど、あると「善い」倫理。気遣いや親切なんかはその例だ。より「善く生きる」ために自分の裁量をもってコントロールする倫理とも受け取れ、攻めの倫理は自由のもとでの実践であり、同時に自由を獲得していくための行いとも考えられる。

 そうした攻めの倫理が自分を縛ることも出てくるだろう。「親切はしなければならないものだ」「自分がする気遣いをなぜ他人はしないのだろう」と、本来は自由であるはずのものが義務のように感じられ、生きづらさにつながるかもしれない。著者はバランスを取ることが重要だという。自分の行いがどういった原理に従う倫理に分類できるかを把握できれば、自分や他人を縛り付けるようなものなのかがわかり、バランスをとって生きることにつながる。生き方を自由にする学問。それがふだんづかいの倫理学である。

今月きいたもの(2019年4月)

Stella Donnelly『Beware Of The Dogs』(2019年)

Beware Of The Dogs

 オーストラリアのSSW。パンクも逃げ出すような強い言葉が歌われているようだが、曲調は超絶ポップでどこか牧歌的。したがって晴れた昼間に聴くのが良い。でも歌詞は衝撃的なもの。それでも曲調は爽やか…と逡巡のループみたいなのにはまったが、良いメロディはそれだけで良いものなのだ。

 

Nilufer Yanya『Miss Universe』(2019年)

Miss Universe

 ロンドンのSSW。ソウルシンガーみたいなことも書かれてたけど、グランジみたいなのもあったり、曲ごとに雰囲気がガラリと変わるごった煮アルバム。キャッチーだったりメロウだったり、どの曲も良い。

 

くるり『ソングライン』(2018年)

ソングライン <通常盤:CD>

 初めて聴くけど聴いたことがある気がする。どう聴いてもくるり。安心のブランド。

 

Frank Ocean『Blonde』(2016年)

Blonde [Explicit]

 アルバムというより、「Self Control」を聴いている。2分半くらいからの転調部分が夜明け・夕暮れを想起させるというのを聞いて以来、ふとした時についつい聴いては、胸を締め上げる切なさみたいなのを味わっている。荘厳なのに切ないというのはなんだかすごい。ランニング用の曲にもしている。走るリズムと合っているのかはわからないが。

今月みたもの(2019年4月)

スティーヴン・スピルバーグブリッジ・オブ・スパイ』(Bridge of Spies)2015年

ブリッジ・オブ・スパイ (字幕版)

 冷戦下、米ソが互いに捉えた諜報員同士の交換に奔走する弁護士ドノヴァンの物語。たとえ敵国のスパイであろうと、法の下では平等な人間として扱わなければならないと主張し、世間からのバッシングにもめげずに戦うドノヴァンの姿にぐっときそうになる一方で、お前の国も国境侵犯して偵察機飛ばしとるやんけ、という気持ちも頭をもたげる。ともかく分断をもたらす戦争はしてはいかんという映画。

 ソ連のスパイを演じたマーク・ライアンスは、知的で得体の知れない雰囲気をまといすごく印象に残る。なにしろアカデミー賞助演男優賞賞を獲っていた。序盤で逮捕されるシーン、身分をいつわろうと下着姿の冴えないおっさんに化ける場面が見どころ。

 

ジョー・ジョンストンキャプテン・アメリカ ザ・ファースト・アベンジャー』(Captain America: The First Avenger)2011年

キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー (字幕版)

 なんのかんのほとんど観ていないMCUを観まくるマラソンを始めた。エンドゲームとやらを楽しんでみたい…という気持ちがあるのだが、果たして間に合うのか。

 ということでここからスタート。キャプテン・アメリカとはダサい名前だと思っていたら、ダサいコスチュームを着てダサいダンスを踊る奴だった。この人はすごい特殊能力があるわけじゃなくて、ちょっと人体能力がずば抜けてるだけで、あとは勇気だけだ!という島村ジョータイプに思われるのが好感の持てる部分。インディ・ジョーンズ感のあるお話でした。

 

ジョン・ファヴロー『アイアンマン』(Iron Man)2008年

アイアンマン(字幕版)

 ちょっといけ好かない天才社長がすごいパワードスーツで大活躍する。笑いどころが多々あり、テンポよく面白い。

 

ルイ・レテリエインクレディブル・ハルク』(The Incredible Hulk)2008年

インクレディブル・ハルク(字幕版)

 怒ると手をつけられなくなる男の話。冒頭のブラジルの雑踏での追いかけっこがとても良い。変身しても下半身を露出しないように、伸びるズボンを探すというのは可笑しいですね。ハルクになった後に恥じらいだりするんだろうか。

 

ジョン・ファヴローアイアンマン2』(Iron Man2)2010年

アイアンマン2 (字幕版)

 スーツの着脱方法がどんどんかっこよくなっていく。あんなに自信満々に振舞っていた社長が徐々に弱り、ようやく人に頼ることを知る。自暴自棄になり、アイアンマン姿で主催した自宅パーティのシーンは、バカバカしくも哀れであった。

 

ケネス・ブラナーマイティ・ソー』(Thor)2011年

マイティ・ソー (字幕版)

 空から筋肉男が降ってくる話。ソーの武器はハンマーなんだけど、何を叩いてもいちいち「コーン」と効果音がするのが微笑ましいです。ロキはいい具合に腹が立つ表情をしています。

 

ジョス・ウェドンアベンジャーズ』(Avengers)2012年

アベンジャーズ (字幕版)

 NYを襲う宇宙人に対抗するため、ヒーローが集結する。この映画だけは過去に観たことがあったが、こうして関連作品を見た後だと、面白みが倍増する。

 社長とハルクが大活躍するのだが、シールドのエージェントの皆さんに見せ場があるのが良い。はしゃいだり、強い信念を見せたりしてアベンジャーズの結束を図ろうとするコールソンには心からお疲れ様と言いたい。洗脳から立ち直ったのち、ノールック射的などキレキレの弓術で活躍し、見る人すべてに弓矢への憧れを植え付けたであろうホークアイは個人的MVP。

 

デヴィッド・シルヴァーマン『ザ・シンプソンズ MOVIE』(The Simpsons Movie)2007年

ザ・シンプソンズ MOVIE (吹替版)

 アラスカ先住民族のパワーを受け取った平凡な父親・ホーマーが、環境保護団体からスプリングフィールドの街を守る英雄譚。MCUをぶっ続けで見るのは結構大変なんです。

 

シェーン・ブラック『アイアンマン3』(Iron Man 3)2013年

アイアンマン3 (字幕版)

 アベンジャーズでの戦いから1年。またあんな強大な敵が出てきたらどうしよう…と不安からの強迫観念でとんでもない数のスーツを作り続けていた社長。それを襲うめっちゃ体温の高い敵が現れるという話。今回は試作中のスーツしか手元にないという状態なので、社長の戦力は大幅にダウンしてしまっている。でもその制限があるからこそ、3作目にしても緊張感のある内容となっていて面白かった。

 

アラン・テイラーマイティ・ソー ダーク・ワールド』(Thor: The Dark World)2013年

マイティ・ソー/ダーク・ワールド(字幕版)

 大変な状況でこそコミカルさを忘れない映画。ロキとソーの共闘、ただの変態となったセルヴィグ先生、あとナタリー・ポートマンに胸が熱くなります。9つの世界をあっちに行ったりこっちに行ったりしながら戦うラストでは、右往左往するハンマーから目が離せません。

 

アンソニー・ルッソジョー・ルッソキャプテン・アメリカ ウィンター・ソルジャー』(Captain America: The Winter Soldier)2014年

キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー (字幕版)

 これはとんでもなく面白かった。裏切りとか疑心暗鬼とかいうストーリーはまあ置いておいて、とにかく次から次に飛び出るアクションシーンがすべてかっこいい。キャプテンは他のヒーローと違って、「盾を投げる」程度しか飛び道具がない。高いところからビームでドーンとするのではなく、船の制圧とか、エレベーターからの脱出とか、いちいち全員殴っていくのである。そこがいいんですよ。

 

ジェームズ・ガンガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(Guardians of the Galaxy)2014年

ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー(字幕版)

 ダメなやつらが星を救う話。タイトルの入り方がかっこよかった。なんかコロコロコミックみたいだ。せめてジャンプくらいが良い。

 

ポン・ジュノ殺人の追憶』2003年

殺人の追憶(字幕版)

 田舎町で起こる連続殺人に立ち向かう話。暴行して偽の証言を取ろうとする地元警察官と、冷静に証拠を積み上げようとするソウルからの警察官とがコンビを組むが、あまりに不条理な犯行に次第に互いの行動も入れ替わっていってしまう。とにかく印象的なシーンがたくさんあって、コンクリート工場そばで襲われる時のスリリングな場面、線路が鈍く光るトンネルのショット、そのトンネルとつながるかのようにも見える排水溝など。終始ドタバタしているけれど、そうしたシーンの緊張感との落差が良いアクセントとなっており見ごたえがあった。

 

アラン・J・パクラ大統領の陰謀』(All the President's Men)1976年

大統領の陰謀 (字幕版)

 この時代にいちいちツタヤでソフトをレンタルしているのだが、近場のツタヤのMCU関連のソフトが軒並み貸出中。やむなくMCUラソンを中断。

 『ウインター・ソルジャー』の参照元とのことで手を出しました。報道の自由、正義を行うことへの意志みたいなのは強く感じることができる。しかし話についていくのは結構大変ではある。

 

S・S・ラージャマウリバーフバリ 王の凱旋』(Baahubali 2: The Conclusion)2017年

バーフバリ2 王の凱旋(字幕版)

 宇宙最強戦士って書いてあるし、アベンジャーズに出るんですよね?キャプテンとソーとホークアイを足した分くらいは働きそう。